美味礼讃

海老沢泰久さんが亡くなりました。中島悟さんとF1を冷静に書きつづった文章が印象的な「F1走る魂」で初めて読んで以来、何冊か手に取りましたが、海老沢さんの本の中で一冊あげるとすると、なにをおいてもこの「美味礼讃」につきます。新聞記事を見て手にとって、またあっという間に読んでしまいました。

伝記小説という形になっていますが、辻静雄さんをはじめとする登場人物の善人・悪人の描き分けや食事やヨーロッパの景色のリアリティが、押さえた文章から立ち上ってくるようで、何度読んでもそのたびに新鮮です。とくに出てくる料理については、目の前で調理してもらってそれがそのままお皿に載って出てきたような、ここまで文章で表現しきれるすごさを十分に味わうことができます。

人物譚を存分に楽しみたい人に、ぜひ手に取っていただきたい本です。これだけの本を世に出した方が無くなってしまったことが残念でなりません。



美味礼讃 (文春文庫)
文藝春秋
海老沢 泰久

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